私は、あん摩をすべての施術の基本と考えています。
身体に触れると、筋肉の張りや硬さ、左右差、硬結、ツボの反応など、目で見るだけでは分からないさまざまな情報が手に伝わってきます。
あん摩は、そうして身体から得た情報に対して、そのまま手を使って働きかけることのできる施術です。
触れて、感じて、そのまま施術する。
その意味で、私はあん摩を非常に直観的な施術だと考えています。
そして、この「あん摩で身体を読む力」は、鍼灸を行ううえでも欠かせません。
どこに反応があるのか。
どの程度の刺激が必要なのか。
手で働きかけるのか。
鍼を使うのか。
灸を使うのか。
身体に触れて得た情報が、その後の施術を組み立てる土台になります。
だから私は、
「良いあん摩は、良い鍼灸につながる」
と考えています。
あん摩でしっかりと身体を捉えること。
それが、その人に合った施術へ進むための第一歩です。
あん摩の大きな特徴は、身体の状態を確かめることと、施術することが一続きになっていることです。
身体に触れると、筋肉の張りや硬さ、左右差、動きにくさ、ツボの反応など、さまざまな情報が手に伝わってきます。
そして、気になる反応を感じたら、そのまま手を使って働きかけることができます。
触れて、感じる。
感じたところに、手を使って働きかける。
そして、もう一度触れて反応を確かめる。
私は、こうしたあん摩の特徴を「直観的な施術」だと考えています。
ここでいう「直観」とは、感覚だけに頼って施術するという意味ではありません。
手から得られる情報と、これまでに培ってきた知識や経験を重ね、その場で身体の状態を判断しながら施術していくということです。
道具を介さず、自分の手で身体を感じ、その手でそのまま働きかける。
一般には、「あん摩」と「マッサージ」が同じような意味で使われることがあります。
しかし、当院ではこの二つを明確に区別しています。
あん摩は、布の上から経絡に沿って行う施術です。
身体に触れながら状態を確認し、その反応を感じ取りながら、手を使って働きかけていきます。
一方、マッサージは肌に直接行い、停滞した体液を心臓へ還流させることを目的とする施術です。
そのため、あん摩とマッサージでは、身体への働きかけ方だけでなく、施術する方向も大きく異なります。
当院で実際に中心となっているのは、ほぼ「あん摩」です。
「あん摩マッサージ指圧」と一つの資格名で呼ばれていますが、それぞれを同じ手技として扱っているわけではありません。
何を目的とし、どのように身体へ働きかけるのか。
その違いを理解したうえで、必要に応じて使い分けています。
あん摩と指圧は、どちらも手を使って身体に働きかける施術ですが、当院ではその働きかけ方の違いを意識して使い分けています。
あん摩では、筋肉を押すだけではなく、筋繊維に対して横方向へずらすような操作を加えることがあります。
施術者の間で「筋を切る」と表現することがありますが、実際に筋繊維を切ったり傷つけたりするという意味ではありません。
筋繊維に対して垂直方向から働きかけ、線維を横へ動かすように操作することで、筋肉の状態に応じて働きかけていきます。
一方、指圧では、こうした横方向への動きを加えるのではなく、狙った場所に対して垂直方向から適切な圧を加えます。
限局した硬さや硬結のような反応に対して、その場所へ適圧を加え、変化をみていきます。
ですから、あん摩がよいのか、指圧がよいのかを最初から決めているわけではありません。
その場所が今どのような状態なのか。
それを手で確かめながら、あん摩にするのか、指圧にするのかを選びます。
適刺激によって、悪い状態をいったん崩す
私は、施術とは「その状態に合った適切な刺激によって、望ましくない状態にある組織へ変化を起こすこと」だと考えています。
少し強い言い方をすれば、
「破壊なくして再生はない」
というのが、私の施術に対する考え方の一つです。
もちろん、正常な組織を壊したり傷つけたりするという意味ではありません。
硬くなっている。
緊張が続いている。
硬結ができている。
そのように、望ましくない状態に固定されている組織へ適切な刺激を加え、その状態をいったん崩して変化のきっかけをつくる、という意味です。
大切なのは、強い刺激を加えることではありません。
その組織、その状態にとって必要な方法と強さを選ぶことです。
あん摩で筋繊維を動かすのか。
指圧で硬結に垂直圧を加えるのか。
鍼を使うのか。
灸を使うのか。
方法は違っても、目指しているのは同じです。
その身体に必要な「適刺激」を選び、変化するきっかけをつくる。
それが、私の施術の基本にある考え方です。
5.良いあん摩は、良い鍼灸につながる
私は、良いあん摩ができることは、良い鍼灸を行うための大切な土台になると考えています。
あん摩では、身体に直接触れながら、筋肉の張りや硬さ、左右差、硬結、ツボの反応などを手で確かめます。
そして、その場で感じ取ったものに対して、そのまま手で働きかけることができます。
この「触れて、感じて、判断する」という過程が、その後に鍼や灸を使うときの基準になります。
どこに刺激が必要なのか。
どの程度の刺激が適しているのか。
あん摩で対応するのか。
指圧を使うのか。
鍼を選ぶのか。
灸を加えるのか。
その判断の出発点になるのが、手から得られる身体の情報です。
私は、施術とは単に決められた技術を当てはめることではなく、その場所の状態に応じた「適刺激」を選ぶことだと考えています。
そのためには、まず「今、身体がどうなっているのか」を捉えなければなりません。
だからこそ、あん摩で身体を読むことが重要になります。
「良いあん摩は、良い鍼灸につながる。」
そして良い鍼灸もまた、目の前の身体を正確に感じ取るところから始まる。
これが、私があん摩をすべての施術の基本と考えている理由です。